こんにちは、吉田智也です。
訃報の連絡を受けて、何をどう手配すればいいのか分からないまま検索している方も多いのではないでしょうか。
私も取引先の訃報を受けた朝、注文画面の前で手が止まった経験があります。
弔事の花は、選び方よりも「贈っていいのかどうか」の確認が先に来ます。
胡蝶蘭を育てている立場から、贈る前に確認すべきこと、色や立て札の決め方、そして花ではなくお花代を包むという選択肢まで、順にお話しします。
弔事の花に胡蝶蘭が選ばれる理由
香りが立たず、花粉も飛び散らない
胡蝶蘭は、ほとんど香りません。
式場や仏間のように人が集まる閉じた空間では、この特徴が効いてきます。
香りの強い花は、それだけで体調を崩す方がいますし、線香の香りとぶつかることもあるからです。
花粉も飛びません。
胡蝶蘭の花粉は粉状ではなく、塊になって花の中心におさまっています。
喪服や祭壇の白い布を汚す心配がないのは、贈る側にとって地味に大きな安心材料です。
ひと月以上、そのままの姿で咲き続ける
胡蝶蘭の花持ちは、置かれた環境にもよりますが、おおむね1か月から3か月ほど。
切り花やアレンジメントが1週間ほどで役目を終えるのと比べると、時間の単位が違います。
葬儀が終わったあと、ご遺族には手続きや挨拶回りが続きます。
その落ち着かない時期をまたいで花が残っているというのは、鉢ものならではの働きだと思っています。
洋ランは、家庭で自分用に買う花というより、お祝いや贈答の場面を中心に流通してきた品目です。
花きの統計や生産の状況は、農林水産省の花きに関するページにまとまっています。
市場に並ぶ胡蝶蘭の多くは、誰かが誰かに贈るために育てられた鉢なのです。
世話の手間がほとんどかからない
私が弔事に胡蝶蘭をすすめるいちばんの理由は、実はここにあります。
受け取ったご遺族に、余計な仕事を増やさない花だからです。
水やりは週に一度あるかないかで足ります。
毎日の水やりが必要な花を贈ってしまうと、疲れているご遺族にとっては、いたわりのつもりが宿題になりかねません。
贈る前に確認したい三つのこと
ご遺族が供花を辞退していないか
最近は、香典も供花も辞退されるご家庭が増えました。
訃報の文面に「ご厚志辞退」「供花・供物の儀は固くご辞退申し上げます」とあれば、花は贈らないのが正解です。
やっかいなのは「香典辞退」とだけ書かれている場合で、供花は受け付けていることもあれば、一切の品を辞退という意味のこともあります。
自己判断せず、葬儀を担当している葬儀社に問い合わせるのが確実です。
斎場に持ち込めるか、指定の花屋があるか
見落としやすいのが、この一点です。
斎場によっては外部からの持ち込みを断っていたり、祭壇との統一感を保つために葬儀社経由の手配に限っていたりします。
私も一度、良かれと思ってネットで注文した鉢が受け取ってもらえず、慌てて自宅宛てに送り直したことがあります。
確認すべきなのは次の三点です。
- 持ち込みが可能か、葬儀社を通す必要があるか
- 置けるサイズと数の上限
- 通夜に間に合わせるための締め切り時刻
宗教・宗派と、地域の慣習
仏式では白い胡蝶蘭が広く使われますが、神式では白い花を基本とし、キリスト教式では鉢植えではなく生花を用いるのが一般的です。
宗派や地域によって扱いが変わる部分でもあるので、葬儀の流れやマナーについては全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)のお役立ち辞典が参考になります。
迷ったら葬儀社に宗派を伝えて相談する。
それがいちばん失礼のない進め方です。
色・本数・立て札の決め方
通夜と葬儀は白、四十九日を過ぎたら淡い色も
通夜や葬儀に贈るなら、花は白一色を選びます。
ラッピングも白やグレー、薄い紫といった落ち着いた色にして、慶事で使うような赤やゴールドのリボンは外してもらいます。
四十九日を過ぎると、少しずつ選択肢が広がります。
四十九日をもって喪が明けるという考え方があるためで、この区切りについては全葬連の四十九日法要の解説が分かりやすくまとまっています。
| 贈る時期 | 花の色 | ラッピング |
|---|---|---|
| 通夜・葬儀 | 白 | 白、グレー |
| 四十九日まで | 白 | 白、薄紫 |
| 四十九日以降の法要・お盆 | 白、淡いピンク、リップ系 | 落ち着いた色味 |
淡いピンクを選ぶ場合も、故人やご遺族との関係を考えて決めてください。
先方が高齢のご夫婦だけの家なら、私は年忌でも白を選びます。
本数は三本立ちか五本立ちを基本に
胡蝶蘭は、一つの鉢に何株入っているかで「三本立ち」「五本立ち」と呼び分けます。
弔事では割り切れない奇数が好まれるため、三本立ちか五本立ちが基本です。
金額の目安は、個人として贈るなら1万円から2万円、会社名義や取引先へなら1万5千円から3万円あたり。
五本立ちになると3万円を超えてきますが、大きすぎる鉢はご自宅に置ききれないこともあります。
祭壇に飾るのか、後日ご自宅に届けるのかで、選ぶサイズは変わると考えてください。
判断に迷ったときは、届け先の広さから逆算するのが確実です。
斎場に飾ってもらうなら五本立ちでも収まりますが、マンションの一室に届けるなら三本立ちで十分。
高さ80センチほどの鉢は、想像より場所を取ります。
豪華さで気持ちを示そうとして、置き場所に困らせてしまっては本末転倒です。
立て札は「供」と贈り主の名前だけ
弔事の立て札は、余計な言葉を入れません。
表書きは「供」または「御供」とし、その下に贈り主の名前を記します。
故人のお名前を入れないのが原則です。
| 贈り主 | 立て札の書き方 |
|---|---|
| 個人 | 供 山田 太郎 |
| 会社 | 供 株式会社〇〇 代表取締役 山田 太郎 |
| 部署の連名 | 供 株式会社〇〇 営業部一同 |
会社として贈る場合、社名は略さず正式名称で書きます。
「(株)」と省略された立て札は、受け取る側から見るとどうしても事務的に映ります。
花を贈るか、お花代を包むか
現金のほうがありがたい場面がある
花を贈ることだけが正解ではありません。
家族葬で会場が狭い、供花の数が制限されている、遠方ですぐには手配できない。
こうした場合は、花の代わりに「お花代」として現金を包む方法があります。
私自身、家族葬と聞いた時点で花の手配をやめ、お花代に切り替えたことが何度かあります。
飾る場所のない鉢を受け取らせるより、そのほうがご遺族の負担にならないと考えたからです。
お花代には二つの意味があります。
会場に飾る花の費用としてご遺族に渡す場合と、香典を辞退されているときに香典の代わりとして渡す場合です。
どちらの意味で渡すのかによって金額の目安も変わるので、混同しないよう気をつけてください。
封筒と表書きの基本を押さえる
お花代を包むときは、結び切りの白黒水引の不祝儀袋を使い、表書きは仏式・神式なら「御花代」、キリスト教式なら「御花料」とします。
文字は薄墨の筆ペンで書きます。
金額の相場や中袋の書き方、渡すタイミングまで含めた具体的な手順は、お花代の封筒の書き方ガイド|金額相場や渡し方まで徹底解説にまとまっています。
封筒の見本まで載っているので、手元に一度開いておくと迷いません。
葬儀当日は受付で「お花代としてお納めください」と一言添えて渡します。
後日弔問するときは、お悔やみの言葉とともに直接お渡しします。
届いた胡蝶蘭を、負担なく置いてもらうために
置き場所は「明るい日陰」で十分
ここからは、育てている側からのお願いです。
弔事で贈られた胡蝶蘭は、そのままご自宅に残ります。
ご遺族が世話に困らないよう、贈る側が最低限の扱い方を知っておくと、一言添えるだけで違います。
置き場所は、レースのカーテン越しの光が届く室内が理想です。
直射日光に当てると葉が焼け、逆に暗い部屋に置き続けると株が弱ります。
仏間が北向きで暗い場合は、日中だけ明るい部屋に移してもらう程度で構いません。
エアコンの風が直接当たる場所だけは避けてください。
胡蝶蘭にとって、乾いた風は水切れよりも堪えます。
水やりは「乾いてから」でいい
ギフト用の胡蝶蘭は、化粧鉢に数株をまとめて入れた寄せ植えになっています。
水やりは、鉢の中の水苔やバークが乾いてから、株ごとにコップ半分ほど。
頻度でいえば、春から秋は週に一度、冬は10日から2週間に一度が目安です。
- 受け皿にたまった水は必ず捨てる
- 花や葉に直接水をかけない
- 化粧鉢に直接水を注がない
枯らす原因のほとんどは水のやりすぎで、水切れではありません。
少し乾かし気味に、というのが胡蝶蘭と長く付き合うコツです。
花が終わったあとを一言添える
最後の一輪が落ちた鉢を前にして、捨てていいのか分からず困っている方をよく見かけます。
花が落ちても株は生きていて、翌年また咲かせることができます。
花茎を根元から数えて4節ほど残して切ると、そこから再び花芽が伸びることもあります。
そこまで説明する必要はありませんが、「花が終わっても葉が元気なら捨てないでくださいね」と一筆添えるだけで、鉢の行き先は変わります。
故人を悼んで贈った花が、翌年もう一度咲く。
私はそれを、贈り物のいちばん静かな続き方だと思っています。
まとめ
お悔やみに胡蝶蘭を贈るときは、まず辞退の有無と斎場のルールを確認するところから始めてください。
通夜と葬儀は白、四十九日を過ぎれば淡い色も選べます。
本数は三本立ちか五本立ち、立て札は「供」と贈り主の名前だけ。
会場の事情で花が置けないときは、お花代を包むという方法があります。
そして、贈ったあとの鉢は、ご遺族の暮らしの中に残ります。
明るい日陰に置いて、乾いてから水をやる。
その二つだけ伝えておけば、花は長く保ちます。
慌ただしい時期だからこそ、手を動かす前のひと呼吸が、いちばん失礼のない選択につながるはずです。